このページをご覧になっている誰より長く深く大道芸に携わってきた方がいます。
あるパフォーマーは「大道芸の母」と呼びます。
ヨコハマ大道芸実行委員の大久保 文香さんです。

フェスティバルの実行委員は、観客でもなく、演者でもない、その両者の間をつなぐなくてはならない存在です。
前とも後ろとも違う、真ん中の位置からしか見えないものがあるんじゃないかなぁ。と、お話を伺ってまいりました。

「何を話したらよいの?」

突然の訪問であったため多少戸惑った様子でそう聞かれた。
当初、質疑応答形式のインタビューを予定していたのだが、その時「違う」と、思った。

僕が質問を行って答えてもらっていては、僕の世界以上のものは出てこない。
それは「演者」の世界だ。

今回は大久保さんからしか聞けない言葉が欲しかった。僕は言った。

「なんでもいいです。大道芸で大久保さんが話したいことをお願いします」

「それならいっぱいあるわ」

彼女はそう言って話しを聞かせてくれた。




 

 
 
 


日本の大道芸と海外のフェスティバルの開催の管理状況で、
私はいつもスタッフのあり方の違いっていうのを感じているんですよね。


一番の違いは、スタッフがいない。


「ほんとに大丈夫なんですか?」って事務局に聞いたら、
テクニカルスタッフが何人か会場を回って
音響が調子悪くなった人のために居る、そんなくらい。


お巡りさんもプラプラしてる(笑)
みんな自主管理してるの。

アーティストはプロなんだからって事で、
やる場所は決められているからそこへ行って
黒板に何時から何時、だれ誰、ポンって書いて置くんですよ。出演者がね。
もちろん音響も道具も自分たちで楽屋となるホテルからそこまで引っ張って行くの。

見てる方だって、いくら観客が多くなっても、
その中を通って向こうへ行きたい人や、乳母車を押してる人が
「パードゥン(ごめんなさいね)」って言うと自然と道が開くわけ。


日本みたいに「すみません、乳母車が通ります、道を開けてください」とか
「ここは通り道です立ち止まらないでください」とか、
挙句の果ては幕を張って見えないようにしちゃうとかそういう事は一切無い。自由。


芸人さんも見てるお客さんも含めて、
ものの見事に統制が取れてて誰からも文句が言われない。


どっちが良い悪いって事じゃなしに、
文化の違いだっていうのは良く分かっているんだけど、
でもやっぱりそういう風にしてみたいなっていうのがありますよね。

 

それとね、私思うんだけどね、大道芸イベントにタイムスケジュールがなくて、
たまたま来て出会えて楽しめるっていうのがいいのよ。


やる人も今日は風があるからディアボロをやめて
シガーボックスにだけにしようとか、
30分のショーじゃなくたって15分のショーでも構わないって、
そういうのがあれば一番いいのよね。

ここ込んでるな〜、じゃぁ、あそこのうどん屋でご飯食べて、
終わる頃に行けばたぶんバラけるからその頃に行ってみようかなとか、
暑いから日陰で見ようかな、とか。


ガイドブック片手にがむしゃらになって行くような、
そんなスタイルじゃないんじゃないかなって、最近つくづく思いだしたの。


だから、見る人も自分を枠にはめないで、
出たとこ勝負で見物するのが一番じゃないかなって。



はじめ、野毛大道芸はタイムスケジュール公表しなかった、作らなかった。


隣終わりましたどうぞって言って、
じゃあここの音がバッティングするから、
終わってからこうしようって。そういう、
それがほんとの大道芸だと思うんですよ。


だけどそれは今のせっかち日本には合ってないんでしょうかね?


何時から何時までだれ誰さんで、それからスタンバイの時間を15分入れて、
それからだれ誰ってテレビ的に作っていかないと誰が納得しないんでしょうか?

スタッフが納得しないんでしょうか?

見る人が納得しないんでしょうか?

やる人が納得しないんでしょうか?

そういう風に世間がなってしまったんでしょうか?



もっと大道芸の世界って自由であるべき、
最後の砦だと思うんですけどね、この世の中のもので。


そりゃ体を売るとかそういう影の部分は別にして、
皆が、子供からお年寄りまでが見られるものの中で最後の砦が大道芸だと思うんですよ。

これをあなたたちが守らなくて、私たちが守らなくてどうします?
自分たちでどんどん窮屈にしちゃって、
行政にコントロールされてっていう状況を私は良しとしません。


----------昔の大道芸って、今特に路上でやってて感じるんですけど、
                          一つの芸が長かったと思うんですよ

 

私はねぇ次から次っていうより一つの芸を、
たとえばカムさんなら、カムさん桶の芸だけでいいと思うんですよ。

あれだけ黙々とやっていいんだけど、
それを許さない見物客というか周りが居る訳よ。


もっと30分・25分のショーに仕立てなければ認めてやらないみたいな、
そういった圧力が無言のうちにあるわけでしょ、
それもやっぱりテレビのせいかな?
テレビの影響ってほんと大きいと思う。

でもね、テレビを超えないといけないと思うのよ。
テレビって所詮 絵空事でしょ?


だけど大道芸って目の前でやってる人の汗も見えるし体臭も感じるって、
そういのって素晴らしいことだって思うのよ。


学校の先生とかPTAとか幼稚園から「すみませんけど派遣して下さい」って
5千円とか1万円とか言うのよね。で、素人さんでもいいですからって言うのよ。


そういう時私は「申し訳ないですけど」って断るんですよ。


素人さんの普段サラリーマンやってて土日だけやってる人はいなくはないですよ、
でもどうせ子供の時に見せるんだったらば、本物の芸を見せたいとは思いませんか?


1万円、2万円で素人さん見せるんだったらそれはお金をどぶに捨てるのと同じだから、
2年3年貯めるか、もうちょっと工夫してバザーでもやってお金貯めて、
プロ中のプロって人の芸を見せた方が子供の教育のためになるから、
そんな素人でもいいなんてのはお断りします。


子供には本物を、その芸を通してその人間性、そういうものを見せなきゃいけないから、
あなたたちにも責任がいっぱいある。


責任ていうと堅苦しいけど、そうじゃなくて自分の磨き上げたものを自信をもって
みんなの目の前でさらすってこと。見せるんじゃなくてさらすんですよ。


ほんとにその人の芸をみると、悪いけれど、
その人の人となりとか透けて見えるんですよ、面白い事に。思うでしょ?


お金お金お金って思ってる人の芸と、カムさんみたいに…(笑)
お金関係なしに桶蹴っ飛ばしてる人と・・・ねぇ、ちょっと違っちゃいますよね。

だから私、面白いからお手伝いしてる。うふふ。ほんとに面白い仕事だと思うから。


市役所の仕事する事より、銀行員で高給取るより、
やっぱり皆さんとお付き合いする方がすごく面白い。


刺激的なことでもあるし、興味深いし、エキサイティングするもの。


あまりお手伝いにはなってないんだけど、
はじっこにぶら下がっているのはそういう理由です。








だから、もっとほんとにお手伝いはしたいんだけど、
その方法がまだ矛盾ばっかり抱えてて、
どうして行かなきゃいけないのか、どういう風にしたらいいのかね。
ましてやこう不景気が続いちゃうと…

 

日本って言うのはね、あなたたちの職場が少ない。幅がせまい。
ストリートでやるかイベントでやるかステージでやるか、そのくらいでしょ?


だけど海外に行ってる人に聞くと、いろんなところでやってるのよね。
ショーパブみたいなところとか、キャバレーってお姉さんが居る所じゃなくて、
ショーを見て酒を飲むだけのようなところ、大人の為の遊び場ね。
おかまさんの格好してジャグリングするの。


もうなんでもありって感じなんだけど、それでもいろんな処でそういう隙間っていうか、
ショーを楽しむ大人だけで楽しむ、夜遅く2時〜4時までなんてのでやる。

 

― お話は日本の大道芸ショウスタイルへと展開します


今の若いパフォーマーの人に言いたいのは、
ダンスとかパントマイムとかちゃんと学んでからジャグリングをやったり
マジックをやったりやったほうがいいんじゃないの?ってこと。


差す手引く手が全然ちがうわけ、そういう基本があったひとがジャグリングやるにしても、
指の先まで神経が届いてる。

それと、オリジナリティーってのは大事だと思うよ、特にジャグラー関係はね。
マジックであろうがパントマイムであろうがね、ほんとオリジナリティが大事だから。


私は、はい次、はい次って言うのが嫌いなのよね


ディアボロやります、次はシガーボックスやります、って
道具だけ変えてやるっていうのは、あれはいかにテクニックがあってもね
印象に残らない、感動しない。


やってる人は一生懸命完璧な芸を目指してるんでしょうけど、
見てる人にとってはなんか違うんじゃないの?って思う


そうするとね、はっきり言うと面白くない。
リアルでテクニックだけ見せられてもね。
それは凄いけど、その凄さが一般の人たちに伝わりにくいわけなのよね。
それがどうしたの?って思っちゃう。
ディアボロを高く飛ばして失敗してもジョークにしちゃう人とさ、
4個やってっていうのとどういう風に違うのか一般の人にはわからないじゃない。
どれくらい難しいのかって。

芸の面白さって機械的に正しいとか正確だっていうもんじゃない処にあるわけじゃないですか。
失敗もしたり風吹いてきたの読み込みだったり、なんだかんだやるのが面白い。


ジャグリングの日本一じゃないんだから・・と思うんだけどね。

 

----------最後に大久保さんにとって大道芸をひとことで言うとなんですか?


そうねぇ。面白いものだと思うね、総合的に言ってね。
やる人も見る人も運営する方も面白いもの。
だからもっともっといろんな人に触れてもらいたい分野だよね、わかってもらいたいって思う。



はじめ、野毛の頃はジャグリングなんて言葉もなくて、
西洋風複玉お手玉って言ってたんだよね。


それで、時々ジャグリングなんて言葉をちょっと耳に入れた人が
言いたくてしょうがなくて、ジャグジーって言ってた。
ジャグジーって、 お風呂になっちゃうじゃないのよね。


他にもね、パントマイマーをパートタイマーって…ねぇ、笑えないわよ(笑)

まぁ、それくらい広がって無かったってことなのよね。
それからどれくらい大道芸人口が広がったと思う?爆発的なもんよ。


 
(インタビュー/2009.03吉日)
   




 
  今回、大久保さんは1時間以上にわたって話してくださいました。

編集の際、泣く泣く削った部分も多くあります。

ただ、今回のお話を通して感じたのは彼女は大道芸を愛しているということ。
人とか、芸とか、全部とっぱらって「大道芸」に対する愛情を感じました。
こんな方が携わってくれているからこそ、
パフォーマーは良いパフォーマンスを 行えるのでしょう。

ありがとうございました。
 

 

 

ヨコハマ大道芸フェスティバル2009

4月18日(土)〜19日(日)開催
     
  ●みなとみらい21大道芸会場  
     
  ●関内馬車道会場  
     
  ●イセザキ会場  
     
  ●吉田町会場  





今回インタビューに答えてくださった
大久保 文香さんの担当する
ヨコハマ大道芸の ホームページ

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